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近くで見たら悲劇でも、遠くで見たら喜劇

■楳図かずお先生をインタビューした出来事

私はプライベートでは著名人インタビューをしているのですが、5年ほど前、あの天才漫画家・楳図かずお先生を取材したことがありました。

テレビなどで拝見するお姿は、すごくファンキーな方なのですが、実際にお会いすると、あんなに巨匠なのに、腰が低く、明るく朗らかで、かなり知的。
子供のような純粋さがにじみ出ている方で、すごく魅力的な方でした。

先生を目の前にしたとき、「あぁ、この方、すごく心が綺麗な人なんだな」って思ったんです。実際にお会いすると、チャーミングな方なんですよね。


77歳のときは映画監督デビューをされていますが、先生自体が、「漫画家は面白いことをしなくてはいけない」というポリシーのある方で、“楳図かずお”という生き方、存在自体が、ある意味、先生の作品なんですよね。

あの一時期話題になった「まことちゃんハウス」も、そういう生き方を見せるために建てられたのだとか。

実は取材は、その「まことちゃんハウス」でさせていただいたのですが、中に入ってみると、洋館テイストで、それはそれは美しい空間でした。
まことちゃんグッズなどもズラリと並んでいて、私的にはかなりテンションの上がる場所でした(笑)。

インタビューの中で、面白いなぁと思ったのが、先生は恐怖漫画だけではなく、「まことちゃん」みたいなギャグ漫画も書かれているのですが、「ギャグと恐怖は表裏一体」なんだそうです。
つまり、笑う方はギャグでも、笑われる方には恐怖を与えることもあったり。さらに追っかける方はギャグでも、追っかけられる方は恐怖だったり。

それは、チャップリンが、「人生を近くから見たら悲劇だけど、遠くから見たら喜劇だ」と同じようなものだと。
なるほどなぁ、と思いますね。

私自身も、過去の自分の失敗をコラムなどで書けるのは、ある意味、遠くから見られるようになることで、喜劇になっているところもあるのかも!

俯瞰してみるって、実はすごく大事なことなんですよね。


さらに、楳図先生とお話しして思ったのが、先生の作品って、単に怖がることだけを描いているのではなく、「人の本質」についてきちんと書かれているんですよね。だからこそ、読者は共感できるし、古臭くならない。

一番怖いのって、目の前にあるものそのものではなく、それに対して沸き上がる、自分の内側にある恐れや不安なんですよね。

それがあるから、“恐怖”が成立するし、判断力の誤作動を起こし、更なる悲劇を呼んでしまったり。

楳図先生は、人間をよく知っている方なんです。だからこそ、多くの人が共感し、支持する作品をどんどん作られているんでしょうね。

ちなみに、楳図先生と言えば、赤と白のボーダーラインの服が特徴ですが、ここにもちゃんと意味があるんです。

「赤はエネルギーの象徴なんです。血や太陽も赤ですしね。でも赤だけだと赤と言えるかどうか。だから対比させる白が必要。以前、フランス人に『白は色ではありません』と言われたことがあって、それから僕にとって白は、『ありません』の意味なんです」と。

いつまでもエネルギッシュに、お元気でいていただきたいものです。

<ご参考まで>

【楳図かずお】77歳でホラー映画監督デビュー「自伝的な話にしました」

http://www.zakzak.co.jp/people/news/20140926/peo1409260830001-n1.htm

byコラムニスト・ひかり

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