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「理趣経」の“欲深い”幸せの教え

■密教「理趣経」の幸せになれる秘訣

「理趣経」というものがあります。これは、密教のお経の中でも、性的表現を含んだために秘教とされていて、弘法大師が天台宗の最澄に、「そのお経を貸してほしい!」と頼まれたけど、断ったお経とも言われています。

このお経は、人が生きているままに仏になれる、一筋の道を説いています。

この内容がとにかく深いんです。

例えば、宗教的な教えでは、「性欲を含め、欲を持っちゃいけない!」とはよく言われるものです。

でも、「理趣経」では、まずはじめに、欲望も含め、清く美しいものだと伝えています。

また、それはなくそうと思って、なくなるものではない、とも言っています。

性欲があるからこそ、私たちは愛する人とHをし、子供ができ、子孫繁栄にもつながるわけです。

また、そうなるために、神(宇宙)は、性欲というものを人間に与えたわけです。

つまり、人間の持つ性欲に対して、大肯定しているのが、このお経なんです。

ただ、実はそこに、このお経が秘経と言われている理由もあります。

そういうことを単に鵜呑みにしてしまう人は、「欲まみれの生活でいいんだ!」と思ってしまうからです。

それは、違うんです。

欲望はなくならない。だから捨てなくてもいい。でも、人が欲する欲は、<小楽>である(=自分のためだけの楽しさ)。それを<大楽>(=もっと大きい楽しさ)に変えればいい!ということを伝えているわけなんです。

Hは愛しい人と1つになりたい、という欲です。

その欲をもっと大きくして、宇宙と1つになりたい、という欲を持てばいいんだよ、と言っているんです。

つまりそれは、敢えて表現するならば、<宇宙とHをする>ということ。

スケールが大きいですね(笑)。

図説「理趣経」入門(鈴木出版)には、こういうことが書かれていました。

「宇宙生命が人間の肉体に宿っているあいだは、人間は生きていますが、死ねば、生命は肉体を離れて宇宙生命のなかへ帰っていく」

「鮭には生まれた川に帰るという回帰本能があるように、人間は“阿(あ)の世”という宇宙の海への回帰本能をもっている」

(※大日如来を一文字で表すと、「阿(あ)」なんです。つまり「あの世」=阿の世=大日如来の世界だったんです!)

つまり、「宇宙と1つになりたい」というのは、生物のもつ、最大の欲のようです。

「理趣経」には、こういったことも紹介しています。

人々の苦しみの原因は、「貪欲」「怒り」「愚痴」の3つだと。

むさぼるような欲が人を苦しめ、さらに、欲が大きくなればなるほど、思い通りにならないことで、怒りも増す、のだと。

ただ、ここでも、「怒り」という感情がなくなることはない、と伝えています。

だから、個人的な怒りを、もっと世界が平和になるための大きな怒りに変えれば良い、と。

結局、人間から湧き上がる欲望も感情も、どんなものも、元は悪しきものではなく、清いものなんです。なくそうと思ってなくなるものではない。

だからこそ、その欲や思いを、よりスケールを大きくすることで、人々を幸せにしたいと願い、行動することが、人間のままで仏になる方法だ、というわけなんです。

納得でしょ?

欲望(小楽)の延長に、実は無私、無欲につながるもの<大楽>があったんだ、って、すごい話ですよね。

そして、その段階に進められれば進められるほど、人は幸せになれる。


やはり、「単に無欲になればいい」というのは、結果に過ぎなくて、そこまでの過程になにがあるのかをきちんと理解することこそが、大切なんでしょうね。

「理趣経」は、かなりスケールの大きい教えですね。

byコラムニスト・ひかり

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