三重県から上京し、大学生になった頃・・・。山奥で生まれ育った私は、東京のギャルに苛められないだろうかと心配した。
ところが、クラスメイトは同じような田舎者ばかり。ほっとしたような、拍子抜けしたような。しかし2人だけ、見るからに東京の女がいた。どちらも気が強そうで、派手な美人。
彼女たちに近寄るのは、まだ早いな・・・。地味な子から練習して、力を蓄えよう。手始めに、モーツァルトのような髪型の大人しそうな女子と友達になってみた。
彼女曰く、
「彼氏にするなら、東大生で、イケメンで、話も面白くて、お金持ってて、浮気しない人じゃないとダメなの~♪」
ほ、本気なのか・・・!?とんでもない野望を持っている。大真面目に言うので、面食らった。そんな難しい男を、どうやって手に入れるつもりだ?聞けば彼女、今まで男と付き合ったことも、ロクに話したこともないという。生身の男と交流がないと、ここまで理想が跳ね上がってしまうのか!かなりの恐怖を感じた。
せっかく東京にやってきたのだ。夢物語に付き合っている暇はない。思い切って、都会のオンナたちに近寄ってみることにしよう。
・・・彼女たちは、実に人間らしかった。
「彼氏に7股されたのー!!」
「私の彼も、他に女がいる気配がするのよ!!」
現実的な恋話が聞けて、安堵した。それにしても7股とは、東京は人口が多い・・・。
「もう、優しい男がいいわ・・・」
彼女たちは、若いうちにサクッと結婚して母となった。王道を進んだのだ。普段から現役の選手であると、相手の強さもわかるし、無茶な戦いは挑まないのだな・・・。しかし、ずっとベンチに座っていると(モーツァルト)相手の強さも、己の実力もわからなくなる。
結果、「イケメンで、お金を持ってて、面白くて・・・」と、現実離れしてしまう。
こりゃ、いかん。草野球の試合にも出場していないのに、メジャーリーグの試合で勝てるはずがない。
まずは基礎体力をつけて、素振りからだ。将来、プロになれるかもしれない。モーツァルトがその後どうなったのかは知らない。理想の人をゲットしていたら、勝手なことを言って許しておくれ。
by三重県