■『ドライブ・マイ・カー』で感じたこと
映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)が、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞しましたね!
先日、『ドライブ・マイ・カー』を拝見しました。
Amazon.co.jp: ドライブ・マイ・カー インターナショナル版を観る | Prime Video
カンヌ国際映画祭で、脚本賞、国際映画批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞、AFCAE賞を受賞、
ゴールデングローブ賞で、日本では62年ぶりに非英語映画賞(旧外国語映画賞)を受賞、
日本アカデミー賞では、主演男優賞、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、照明賞、録音賞、編集賞の計8部門の最優秀賞を受賞。
アカデミー賞では、日本映画で初となる作品賞にノミネートされたほか、監督賞(濱口)・脚色賞(濱口、大江)・国際長編映画賞の4部門にノミネートされ、見事、国際長編映画賞を受賞しました。
海外からも評価されている作品です。
<舞台俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。
しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバー・みさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。>
※映画.comのあらすじから抜粋。画像もこのサイトから拝借しました。
個人的には、なかなか面白かったです。
ハラハラドキドキするエンターテインメント作品というよりは、
淡々と物語は進み、(他界した)妻の語る物語や脚本とリンクしながら、主人公や妻の心情を推測しながら楽しむ作品です。
3時間の大作でしたが、暴力とか、人を傷つけるシーンがあるといった、心をざわざわさせるようなシーンがない作品なので、とても観やすかったし、
主人公と無口なドライバーの、世代も男女も超えた友情のような(同志のような)関係が、心地よかったです。
それに、現代人にとって、とても大切なメッセージも込めた作品だと思いました。
(ここから、若干、ネタバレになるのでご注意)
■自分を知るから、相手のことも分かる!
主人公が演出する舞台に出演する俳優・高槻(岡田将生)が、こういったことを言うんです。
「結局のところ、僕らがやらなきゃいけないことは
自分の心と上手に正直に折り合いをつけなきゃいけないことではないでしょうか。
本当に他人を見たいと思うなら、自分自身を深くまっすぐ見つめるしかないんです」
これがまさに、この主人公のテーマでもあるわけです。
日常生活に波風を立てないように(その生活を維持し続けるために、現実と向き合おうとしなかった主人公が、最後にこういったことを言います。
「正しく傷つくべきだった
自分自身に耳を傾けなかった」
主人公は、「自分の気持ちを見てみぬふりをして、自分の感情をコントロールするタイプ」なんです。
そして、主人公のドライバーのみさきも、自分の気持ちを押し殺して生きてきたタイプ。
だから、2人は共に自分自身の過去と向き合うために、あることをして、乗り越えていくんです。
◇
とはいえ、この俳優・高槻が絶対に正しいのか、というと、実は主人公とは正反対のタイプで、
「自分の気持ちに正直だけど、感情に振り回されるタイプ」なんです。
だから、どっちもダメなんです(苦笑)。
「自分の気持ちに正直でありながら、きちんと受け止め、コントロールできる強さ」が大切なんですよね。
そして、それが、自分だけでなく、他人のことも理解するために重要なことなんです。
これがこの映画の一番のテーマといってもいいでしょうね。
自分自身と向き合うこと、自分を許すこと、そして、人を許すことで、ようやく人は心が楽になれるのかもしれません。
そんなことを教えてくれる作品でした。
byコラムニスト・ひかり