定年退職は、会社員であれば、多くの人が経験することだと思います。
そして、自分だけではなく、配偶者の定年退職も、他人事ではないかもしれません。
舘ひろしさん主演の映画「終わった人」を拝見しました。
<定年退職した田代壮介は、趣味なし、夢なし、仕事なし、さらに家に居場所なし。あるとき人生の転機が訪れるのだが・・・>
すごく笑えて、どこか大切なことを教えてくれる、そんな作品でした。
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私自身、会社員だったときは、もうすぐ定年退職をするという部長の秘書をやったこともあり、その部長のどんどん変わっていく様子に「定年退職って、男の人にとっては、特に大変な出来事なんだな」と思ったものです。
大概、バリバリ働いていた会社員の人ほど、定年退職前になると、「まだまだ自分はやっていけるんだ!」という思いもあってなのか、悪い方に空回りしてしまうことも少なくありません。
中には、「まだ男としてもイケているんだ」と若い女性との恋を目指し始める人もいますしね・・・。
定年退職前と後では、会社で、ある程度のポジションをもらっていた人ほど、キツイことはあるかもしれません。
そういう人は、今までは、その大きな会社がバックがあるからこそ、人からチヤホヤされていたこともあるでしょうし、辞めた途端、“ただの人”になってしまったら、友達だと思っていた人とも疎遠になってしまうこともあるでしょう。
また自分自身も、今までは会社のために働いてきたのに、その会社と縁が切れてしまうと、その積み重ねた“積み木の城”をバーンと壊されたような、何か大切なものを失った気分になると思うんですよね。
そんな中、今まではある意味、「仕事を頑張っていれば許された」ことも“ただの人”になってからは、許されなくなってくるもの。
今までは外で働いていた人間が家でゴロゴロしていると、奥さんに煙たがれ、さらに家事も全くしないでいると、奥さんからも「働いていてくれた方が良かった」なんて思われてしまうことも。
また自分で仕事を始めようと会社を立ち上げた日には、大きな会社に働いていればいるほど、部下に仕事を任せ、現場で働かなくなっているので、勘が鈍っているもの。
それは、仕方がないことなのに、定年退職後、独立したときにそれを認めないで、昔のやり方で仕事をやろうとして、失敗をしてしまったり…。
定年退職ほど、バリバリ働いていた男性にとって人生の転機であることは間違いありません。
ある意味、人生で大切にしていたものを失うタイミングですしね。
だからこそ、夫婦間にも亀裂は入りやすいと思うんですよね。
奥さんの多くが、旦那さんのそんな状況を理解できているか、というと難しいでしょうし、(専業主婦で、働いた経験がそこまでなかったら、尚更)旦那さんに対して、「こんな人だと思わなかった!」とがっかりすることも多いでしょうしね。
だからこそ、その時が来るまでに夫婦がどんな時間を過ごしていくかって重要な気がします。
おそらく、そのときの「妻の役目」ってあると思うんですよね。
いつかは定年退職があることをきちんと夫に理解させておいた方がいいし、その後のことも話し合っていた方がいいと思うんです。
定年退職したからこそのいいことも色々あるから、(自由の時間ができる、とか、旅行に行きやすくなる、とか)まずはポジティブなことから話しつつ、今のうちから「仕事抜きでも繋がれる友達をきちんと大切にしておいた方がいい」ということを伝えたり、「定年退職後のお金の話」もきちんとしておいたほうがいいでしょうしね。(もう毎月の給与は入らないのだから、今まで通りの使い方はできないでしょうし)
あとは、こういう映画を一緒に見るといいのもいいでしょうし!
基本、男性って、仕事が絶好調になっているときほどいい気になりやすいから(苦笑)、「人生は、そんなときばかりではないんだよ」ということもきちんと教えて、定年退職をして、働く場所がなくなったとしても、幸せでいられる人にしていったほうがいいもの。
定年退職後に夫が心を病まずに、これからの生活を過ごせるようにするお手伝いをするのは、ある意味、「奥さんの大切な役目」と言ってもいいかも。
夫婦って二人三脚だから。
逆に、熟年離婚を目指している人もいるとは聞きますが、「退職金が入ったら、さっさと別れて自由になろう」なんて思っているような自分を誇れるかどうか、ですよね。
自分が選んだ旦那さんなのに。
だから、熟年離婚ってなにも夫だけが原因ではなく、奥さんもそれまでの間、何をしていたのか?も問われると思うんですよね。(とはいえ、本当にどうしようもない旦那さんだったら、致し方ないけど・・・)
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この映画では、「定年退職って、生前葬みたいだ」というセリフがあるのですが、まさに男性にとっては生前葬なんだと思います。
そんないつか必ず窮地に立たされる夫を妻がどう支えられるかは、妻の腕の見せ所なのかも。
定年退職をした夫にうんざりする前に、自分ができることを考えるのも、熟年離婚を避けるためには大切なことかもしれませんね。
byコラムニスト・ひかり