書籍「嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 」(ダイヤモンド社刊)を読んだことはありますか?
フロイト、ユングに並び、心理学の三大巨頭と称されているアルフレッド・アドラーの思想を、哲人と青年の会話方式で紹介された一冊です。
「嫌われる勇気」とは言っても、嫌われることを推奨している本ではなく、「他者からの評価を気にしないで、自分の生き方を貫く大切さ」が書かれています。それこそが、「自由」ということなのだと。
現代は、「良い人をやめなさい」とか、「嫌われる勇気を持とう」といった言葉に反響がありますが、それは、多くの人が「自由を求めている」ってことなんでしょうね。
それだけ、多くの人が他人からの評価に左右され不自由な思いをしている、ということでもあります。
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この本で、へぇ!と思ったのが、この一文。
<「AだからBできない」というのは、実は「Aでなければ、自分は有能だ」と暗示をかけている>
例えば、これに当てはめると、「私は綺麗ではないから、恋人ができない」「若くないから、結婚できない」にしても、「綺麗だったら、恋人ができるくらいにそれ以外の部分は魅力的 」「若ければ結婚できるくらいに、それ以外のところは私は問題ない」と自分に言い聞かせている、とも言えます。
極端な発想かもしれないけど、確かに、「Aだから」というのは、基本、言い訳だったりもしますしね。人はどんな欠点があったとしても、トータル的に魅力があれば、なんとかなることもありますしね。
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また、アドラーは、「人間の悩みは、すべて対人関係」と言います。それは、特に、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは、自分の課題に土足で踏み込まれることで引きおこる、と。
「親しき仲にも礼儀あり」と言いますが、その相手との線引きが難しいところってありますよね。
とやかく言わずに、「これは相手の課題である」と思ったときは、軽くアドバイスはしつつも、相手を信じること(=見守ること)が重要です。
相手の課題なのに、自分のことのように扱ってしまっては、お互いのためによくないんですよね。
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さらに、この本で一番のメッセージとなっているのが、「人生において、大事な行動&心理」について。
人生で大事な行動は、
・自立すること
・社会と調和すること
さらに、それができるようにするための心理としては、
・私には能力がある(自分を認める)
・人々は私の仲間である
と思うことだと伝えています。
自立しながらも、社会と調和する大切さ。このバランスって、すごく大切ですよね。
そして、ここで言う、「私には能力がある」と、自分を認めるのは、「自分を受け入れる」ということ。
それがあるからこそ、人のことも受け入れられるし、逆を言えば、自分を受け入れられない人が、人のことなんて受け入れられません。
さらに、ここでいう「人々は私の仲間である」とはどういうことか?というと、学歴社会、競争社会の中で育ってきてしまうことでの「人生の落とし穴」があり、「競争していると、他社全般のこと、ひいては世界のことを敵だとみなしてしまう」=「競争に生きている人の世界は、敵で満ち溢れている」という価値観を持ってしまうことのようです。
だから、幸せそうにしている他者がいると、祝福をするどころか、「私の負け」だと捉えてしまう人も。
そこで、「全ての人は仲間=共同体感覚を持つこと」が幸せに結びつくのだ、と言っています。
共同体感覚をもてるようになる、というのは、実は、スピリチュアル的にも大事なことで、「ワンネス」という言葉で表現されることもあります。
それは、スピリチュアルな視野からみると、私たちは1つにつながっている、ということ。
ただ、この感覚を味わうことは、簡単なことではありません。
でも、単純な話、競争グゼがついて、周りの人を敵だと見える人よりも、「すべての人が、自分の仲間なんだ」と思える人の方が、協力者も増えるし、幸せになれるでしょうね。
そして、この本では、先ほどの「人生の大切な行動&心理」を持てるようになるためには、「自分を受け入れる→他者を信頼する→他者に貢献する」ことが大切で、結局、「他者に貢献する」ことが、さらに「自分を受け入れる」ことにつながる、ということを伝えています。
(自分を受け入れる→他者を信頼する→他者に貢献すること→さらに自分を受け入れられるようになる)
自分がしたことで人が喜んでくれ、褒めてくれると、“自己重要感”が高まる。
そうすると、より自分を受け入れられるようになりますしね。
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私の書いているコラムや本を読んでくださっている方なら、分かると思うのですが、この本に書いてある根本的なメッセージって、すごく似ているんですよね。
ただ、私が突き詰めて考え続けたことが、アドラーの思想につながるというのは、ある意味、「私も無意識的にアドラーと同じ道を求めた結果」とも言えるかも。
以前、19歳の女優さんを取材したら、こんなことをおっしゃっていたんです。
「人と比べないことを大切にしている」「人生は“自分との戦い”である」と。
これも私の書籍「愛される人の境界線」で伝えていたことと、通ずるものがあります。
結局、どんな方向からであれ、どうしたら幸せになれるのか?を追求していくと、<1本の(人生の)道>につながるんですよね。それは、武士道であっても、芸術であっても、仕事であっても、専業主婦であったとしても。
だからこそ、「人が最終的に目指すところは同じ」なんですよね。そこに“真理”がある、というか。
だから、私自身はこの本を読んで、「同じことを伝えるにしても、こういう表現の仕方もあるんだなぁ」と参考になるところもありました。
興味のある方は、ぜひ「嫌われる勇気」の本を読んでみてくださいね!
byコラムニスト・ひかり